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2013年3月5日火曜日

「冴えない彼女の育て方」1‐2巻感想



「あの丸戸史明がラノベを執筆!?」と話題になった
「冴えない彼女の育て方」をようやく消化しました
今度3巻が出るってことで、1-2巻の読了感を忘れる前に
ここに書き殴りたいと思います





丸戸史明と言えば、「ショコラ」「パルフェ」「この青空に約束を」「世界で一番NGな恋」など
数々の名作エロゲのシナリオを担当してきた
ヒットメイキングライターです

剣も魔法も出てこない、実在しそうな舞台設定
時には軽快な、またある時は深淵で濃厚な会話劇
あくまで現実的、しかし読者の度肝をぶっこ抜くストーリー展開
緻密な伏線の回収、涙腺を木っ端微塵に破壊するカタルシス…
彼の描く「あなたの思うよりちょっとだけ少し優しい世界」
多くのエロゲーマーを夢中にさせてきました


そんな彼がライトノベルを書くということでかなり驚きましたが
田中ロミオや虚淵玄など、シナリオライターがノベルを書くこと自体は
前例がないわけではないんですよね
ただ、丸戸氏の文章とライトノベルってのが全然結びつかないというか
最近のラノベを見る限り、「大人の萌え」を感じる丸戸ワールドとは
相容れない感じがする、というのが読書前の感覚。


ちなみにあらすじは…
美少女アニメ・ゲーム・ノベルに並々ならぬ愛情を注ぐ高校生、安芸倫也。
ある日、バイト中に出会った女の子、加藤恵に運命を感じる。
そこで倫也は、彼女をヒロインにしたゲームを作ろう!と立ち上がるが…
…というもの。おお、なんかラノベっぽい



さて、期待7割、不安3割で胸を満たしつつ
「White Album 2」以来の丸戸ワールドに足を踏みいれました
数ページ読み進め、ファーストインプレッションは…



何だこのアニメエロゲのパロディの嵐は!


いやー驚きましたよ
基本的に、丸戸氏の描く会話劇や文章には
彼の出身地である名古屋とその周辺地のローカルネタや
有名な昔のドラマや時代劇のパロディが登場するものの
その量は決して多くなく、むしろ抑え目であり
純粋にボケと突っ込み、皮肉、かみ合わなさで構成された面白さが特徴です

しかし、この「冴えかの」においては
5行に1回はアニメやエロゲのパロディが出てくる
主人公がオタクの高校生ってこともあり、会話がもうそれ一色だし
モノローグや地の文まで一分の隙もなくパロディで彩られてます


なんか、俺の知ってる丸戸ワールドじゃない…
主人公のキャラがかなり立っているところとか
周囲の理解があまり得られない中、困難に立ち向かうところとか
随所に丸戸節が見られはするものの
今までとはかなーり切り口の違う雰囲気
「オタク」という題材を全力でフィーチャーしてるからだろうか
ラノベの読者層を物語に引き込むための戦略的設定なのかなぁ
…なんて余計なことを考えるくらいには戸惑いました

結局、ゲームのヒロインとして抜擢されたいたって普通の女の子(加藤恵)と
主人公と過去に何かあった事を仄めかす2人の女の子(沢村英梨々霞ヶ丘詩羽)を引き込み
ゲームを作るサークルを立ちあげることに成功したところで1巻読了

ちなみに1巻の表紙が英梨々で、2巻の表紙が詩羽
メインヒロインのはずのが一番目立たないあたり、流石普通キャラ
いや、むしろ丸戸作品恒例の
「シナリオが一番重い(メイン)キャラは表紙で目立たない」法則が発動しているのかもしれない…

適度に続きが気になる引きで幕を閉じられたので、ホイホイと2巻に手をかける
軽ーい気持ちで読み進めると…



…きた…きたぞ!

やはり王道ツンデレ幼馴染クーデレ先輩が怒涛の追い上げをみせます
2巻では特に後者、詩羽と倫也の過去と関係が明るみに出てきました

人気の新人作家として名をあげた詩羽と、その作品に魅了された一ファンである倫也
作品を通して対話を深める2人、お互いに心を開き熱く語れる関係を築く
いつしか、詩羽は「倫也が楽しんでくれる」作品を書くために意見を求めるようになるが
その態度は「作品の純粋なファン」というスタンスをとる倫也とは相反するものだった…

そして今回、ゲーム制作の段になって
詩羽がシナリオに織り込んだ「過去の因縁によって結ばれる」ヒロインルートと
加藤恵との交流の中で倫也が魅力を感じた「何気ない普通の恋が実る」ヒロインルート案が衝突


この対比!

「作り手と受け手の線引き」

この対比!

「過去の因縁と新しいときめき」

こ の 対 比 !


いい加減「対比」がゲシュタルト崩壊を起こしそうですが
これぞ丸戸シナリオだよ!!
どうにも両立しそうにない二つの道を提示された主人公が
どちらを選ぶのか、どうやって矛盾を処理するのか
これがあるからやめられんのだよ

「パルフェ」の恵麻vs里伽子、(カトレアvs由飛)
「NG恋」の各ヒロインvs美都子
「ホワルバ2」のかずさvs雪菜
これらの二律背反ルートが瞬時に頭を駆け巡りましたよね

結局今回はあっさりと、どっちのルートも作ることで決着したようですが
詩羽は今後もアタック仕掛け続けてきそうっすね
イイヨイイヨーバッチコーイ!



また、英梨々だったかが劇中で
「クリエイターの創作は現実で得られないカタルシスを得るための代償行為が基本」
みたいなことを言ってたり、

詩羽が執筆した作品について
倫也と意見が衝突した後に書かれた結末が
『主人公は途中から出てきたヒロインと結ばれる
というものだったりするのが、前述のシナリオ論議と相まって
分かりやすく意味深でニヤニヤしますな

いやー俄然面白くなってきましたよ
3巻が待ち遠しいですわー

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